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堤未果『政府はもう嘘をつけない』を読んで

堤未果『政府はもう嘘をつけない』を読んで
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 友人から薦められ、堤未果著『政府はもう嘘をつけない』(角川新書 2016.7 \800)を読みました。前作の『政府は必ず嘘をつく』はまだ読んでいないので 少しずれるかもしれません。
 表紙には「お金の流れで世界を見抜け!」、裏表紙には「『今だけ、金だけ、自分だけ』で…いいんですか?」と書かれていて 筆者が読者に伝えたい核心が述べられています。
 広告スポンサーの顔を伺うマスコミの報道は 事件の核心を報道しないで、核心を隠すために枝葉末節をおおげさに取り上げているから お金の流れを見て何が起こっているかを見極める力をつけねばならないと述べています。まったくそのとおりで 例えば、森友学園問題は 籠池の3通の契約書に核心があるのではなく 財務省の官僚が何故ただ同然で国有地を森友学園に与えたのかということです。籠池は 安倍から100万円の寄付をもらったと言っています。選挙には膨大なお金がいるので、政治家が支持者・支援者に寄付・献金を要求するのは一般的ですが 逆に政治家が支援者に寄付をすることなどほとんどありません。だから 財政的に無理とわかっている籠池に 安倍たち(日本会議)は教育勅語を教える学校を作らせようとしたのだと思います。それに維新・松井大阪府知事が学校認可で加担したのです。籠池の「梯子をはずされた」なる発言が そのことを暗に示していると思います。
 余談ですが 昭恵夫人は出身学校からいっておそらくクリスチャンと思われるので 何で天皇教を幼稚園児に強制する籠池を賛美するのか、驚きです。もちろん美智子もそうですが。まあそれ以上に 創価学会を基盤とする公明党が安倍を支えるのも驚きですが。少しは自らが信じる宗教に殉ぜよと言いたくなります。
 この表裏の表紙に書かれているコピーにはなるほどと思いました。特に裏表紙の「今だけ、金だけ、自分だけ」は 現在の金融資本(架空の貸付貨幣資本)・新自由主義のもとで生きていかざるをえない民衆の気持ち・あり様をうまく表現していて感心しましたが 本の題名「政府はもう嘘をつけない」には それは違うだろうと思いました。おそらく筆者は 民衆が金の流れを見て真実・核心を掴むようになれば、政府は嘘をつけなくなると言いたいのだと思いますが 権力側についた政治家(閣僚)の「本分」は嘘をつく(民衆をだます)ことであり、官僚の「本分」は責任の所在を隠蔽するために言質をとられないおしゃべりをすることだと思います。彼らは 支配階級の利益のために「働いて」いるのです。だから 政府、つまり彼ら政治家・官僚は どれだけ嘘がバレようとも嘘をつき続けるのです。それが彼らの「仕事」なのです。だから 政府を主語にした「もう嘘をつけない」ではなく 民衆を主語にした「もう嘘をつかせない」と言うべきだったと思います。政府を主語にした表現は他人依存であり 本の主旨とは真逆だと思います。
 この点と、あと1点をのぞき(少し後で述べます) この本は 巨大化した金融資本のもとで何が起こっているかを暴露した実に良い本で 私自身見落としてきた真実・核心が明らかにされていて 是非皆様が読まれることをお勧めします。

 本書は プロローグと1~4章、エピローグからなっています。
 プロローグでは パナマ文書の暴露について書いています。「モサック・フォンセカ社から流出した内部資料は、南ドイツ新聞を経由して国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)という団体の手に渡った。ICIJは膨大なデータを独自に分析し、彼らの手で取捨選択された情報のみが、世界に向けて一気に公開されたのだ。」「ICIJの本部はワシントンにあり、…アメリカ側の資金で運営されている。名前を出された要人たちのリストを見ると、…アメリカにとって政治的に邪魔な顔ぶればかりである事実は否めない」。そして 「[暴露の結果]世界各地のタックスヘイブンで摘発された個人や法人は、アメリカに戻ってくる。これからはアメリカ国内のタックスヘイブンに、勝利の風が吹いてくるでしょう」とのアメリカの弁護士の言葉を紹介し 暴露はアメリカによって仕掛けられたものだと匂わせています。
 私がエッと思ったのは 2015タックスヘイブンランキング表で なんと日本は12位に位置していることです。さらに ランキングは1位スイスからはじまって香港、米国、シンガポール、ケイマン諸島、ルクセンブルク、レバノン、ドイツと続いていますが フランスを除き先進資本主義諸国(帝国主義)は上位に位置しています。いかに先進資本主義国がタックスヘイブン化し、資本を特に金融資本を優遇しているかです。
 第1章:金の流れで「アメリカ大統領選挙」が見える! では 大統領選挙というアメリカにとって最も重要な政治が 金融資本によって買われていることを明らかにしていま
す。つまり金融業界は 莫大な献金をして、当選後には閣僚ポストを手にいれているということです。右の表は ウォール街の政治献金額の推移を示したものです[表は省略]。2010年1月、最高裁が企業献金の上限撤廃の決定をだした結果 それ以降、金融資本からの献金額は爆発的に増えていっています。オバマは当選した時には政治献金問題に手をつけると言っていましたが 「[1期目の]7億5000万ドル(約750億円)という史上最高額の政治献金は、2期目の選挙では10億ドル(約1000億円)に跳ね上がった」と非営利の調査報道団体の言葉を紹介し 具体例として「リーマン・ショックで大量の不良債権や不良資産を抱えこんだウォール街は、ヘッジファンドだけで350万ドル(約3億5000万円)を気前よく寄付、その投資は、オバマ政権からの公的資金注入という形で、しっかりと回収された」と明らかにしています。
 さらに 「米国民を筆頭に国内外から金融業界の責任を問う声が高まった時、…[金融業界は]カネ・ロビイスト・回転ドアという『3種の神器』を登場させた。…6大メガバンクは、まず243人のロビイストを雇い入れ、…国会議員らに金融業界の規制をさせぬよう圧力をかけた。2番目に大事な人事。…選挙で大口投資をした業界が回転ドアから政権内部に送り込んだ面々は、金融業界を規制する重要ポジションに次々と就任していった。」…「規制される側の人間を規制する側の政府要職につけるというこの回転ドア人事は、あまりにも効率の良い手法であり、金融業界だけでなく、医療や保険、食品やエネルギー、マスコミなど、あらゆる分野でその効力を発揮する」と述べています。
 その後 この回転ドア人事を具体的に暴露していますが 紹介は省略します。
 私がおかしいと思ったもう1点ですが この本は予備選挙中の16年7月にだされているので仕方がなかったかもしれませんが トランプが企業からの政治献金は受けない(自腹で闘う)と言ったことをうけて トランプを好意的に扱っているということです。予備選挙は個々人の闘いですから個人献金が問題であり トランプはそれは受け取らなかったと思われますが 本選挙は政党同士の争いであり 金融業界から莫大な金がトランプを含む共和党に流れたと思います。なぜなら 当選後の閣僚指名の中には もと軍人とともにウォール街の大物が何人も顔を出しているからです。トランプのもとでも この本で明らかにしている回転ドア人事が行われたと推定できます。そもそも大統領選挙は 国のトップを民衆が直接決める選挙故に 候補者が民衆を如何にうまくダマすかを競いあう場だと思います。

 第2章:日本に忍びよる「ファシズムの甘い香り」 第3章:違和感だらけの海外ニュースも「金の流れ」で腑に落ちる 第4章:「脳内世界地図」をアップデートせよ! エピローグ の具体的紹介は 本書を是非読んで欲しいので省略します。ただ 私がこの本でそうだったのかと気づかされた点を2点紹介します。
 第2章で 憲法では 公務員と言えば特別公務員である国会議員をさし、今で言う国家公務員は官吏と表現されていますが 47年に作られた国家公務員法によって 官吏は身分が保障された公務員とされ 実質日本国の支配者の位置を彼らは獲得したと明らかにしています。確かに いま立法権は国会議員にはないに等しく ほとんどの法律は官僚によって作られています。だから筆者は 改憲で一番問題なのは9条ではなく、15条(公務員の選定及び罷免に関する権利等)や73条(内閣の職務)だと指摘しています。
 その上で 森友学園問題で 無責任を決め込む官僚がかくも迅速に籠池の要望にそった決定をしたのか実に不思議でしたが 本書は 安倍政権がそれまで各省庁で決めていた約600人の幹部官僚の人事を 14年4月、内閣人事局が一括して握ることにしたから 総理の意向にそうように自発的に努力する公務員像が出来上がったと指摘しています。つまり 安倍や昭恵が直接指示しなくても その側近からの発言であれば それは安倍の意向だとして公務員はそれを実現するために努力する様に(いわゆる付度)なってしまっているという訳です。小選挙区制によって 党の公認を得たいがために、議員による党Top(自民党の場合は首相)に対する批判的意見は 議員自身が自己規制するようになりました。官僚=国家公務員でも同じことが生じていたのです。
 もう一つは 第4章のアイスランドの例です。金融立国でやっていこうとしていたアイスランドは リーマン・ショックで国家破産の危機に陥りました。IMFの条件付き融資を受けねばならない状況に陥ったのですが 「マネーゲームの尻拭いを国民に押しつけるなという国民の声は日々大きくなり、…10年3月国民投票で、公的資金による銀行救済は中止され、医療や年金、失業者のためのセーフティーネットをカットするというIMFの緊縮財政案は拒否され、前首相と大手3大銀行のCEOを含む約200人には逮捕状が出された。…アイスランドは、医療費を切り捨てたギリシャとは真逆の政策を実行する。…職や資産を失った人々には住宅支援や再就職支援、食料補助などのサポートが与えられ、高齢者が安心できるよう、年金給付がしっかりと保障された。中でも最も画期的だったのは、資産価格の110%までの住宅ローンを全て免除するという政策だろう。…借金の一日も早い返済を求めていたイギリスとオランダは激怒したが、…アイスランドはその後も順調に経済を回復させ借金も返済…」したということです。さらに 参加型民主主義の手法で新憲法を制定したことを明らかにしています。
 つけ加えて ギリシャについて ドイツやフランスは融資の条件として緊縮財政案を押しつけましたが 軍事費のカットは一度も言わなかったそうです。ドイツやフランスにとっては 武器輸出先としてのギリシャを手放したくなかったのだと説明しています。またTPPで問題になったISDS条項がある限り 原発政策をやめたくても、やめたときの賠償があまりにも大きいので、脱原発は不可能だと述べ 脱原発を本当に実現したいのなら ISDS条項がある通商・貿易条約には絶対反対しなければならないと述べています。
 私は 金融資本(架空の貸付貨幣資本)が主軸になった現代の資本主義からの「脱出」の道は 過剰になった架空の貸付貨幣資本を潰す以外にない それは危機に陥ったとき公的資金を投入して救済するのではなく、倒産するがままにまかせることだと 論理的には考えてきましたが それをアイスランドが実際に実行していたと知り 実に驚きました。アイスランドは人口30万人という小国なので 直接・参加型民主主義が可能だったと思います。1億を超える日本では 同様のやり方は無理なので 最小単位の所(生産協同組合や地区コミューン、いわゆる細胞)でそれを実現する以外に 全体の民主主義を保障することはできないと思います。
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