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堤未果『政府は必ず嘘をつく 増補版』を読んで

堤未果『政府は必ず嘘をつく 増補版』を読んで
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 先月号に続き 堤未果『政府は必ず嘘をつく 増補版』(2016.4発行 角川新書 800円)の紹介です。本書は12年2月に出版した元書に マイナンバーとTPPについての暴露・真実を追加したものです。この後編として先月紹介した『政府はもう嘘をつけない』が書かれています。読んだ順が逆であり 事例も数年前のもので、すでに知れ渡っているものもあり 前回程には感激しませんでしたが 内容的にはそのとおりだと思うので ぜひ皆様が読まれることをお薦めします。
 増補版のまえがきの冒頭で 筆者は「この本のタイトルを見て、ある大手出版者の編集長が『なんて過激なタイトルだろう』と言った」と紹介していますが 私は 後編の『政府はもう嘘をつけない』よりも本書のタイトル『政府は必ず嘘をつく』の方が 核心をストレートに表現していて好いと思います。
 構成は 増補版まえがき プロローグ:ウォール街デモが意味するもの 第1章:「政府や権力は嘘をつくものです」 第2章:「違和感」という直感を見逃すな 第3章:真実の情報にたどりつく方法 エピローグ:「3.11から未来へ」 増補版袋とじ です。

 増補版まえがきでは「民主党政権が参加表明したTPPを『平成の売国奴だ』などと反対し政権を奪い返した自民党は、16年2月、TPP調印式で署名した。マスコミは相変わらずこの条約を関税・農業に矮小化した報道を続け、国民にはこの条約の主目的が非関税障壁の撤廃であることも、世界中で反対の声が上がっている事実も知らされていない。…21世紀の戦争として定着しつつあるテロとの戦い…。アフリカ最大の福祉大国で直接民主主義の成功モデルと呼ばれていたリビアを『独裁者から民衆を救う』名目で爆撃したアメリカは、カダフィ大佐を排除した後、次のターゲットをシリア政府に定めた。…だが欧米と日本の大手マスコミはまたしてもアサド大統領を『残虐な独裁者』として報道、国民の大半がそれを信じ、国際法に反するシリアへの爆撃は止まらない。…アメリカ政府はテロとの戦いを理由に、警察への武器購入助成金を拡大し、警察の軍事化を進めている。過剰軍備の向かう先が治安維持ではなく地域住民だという事実を覆い隠しているのは、ますます洗練されていくプロパガンダと情報統制だ。」と真実を暴露し 「情報の洪水の中で私たちは消化不良を起こし、いつの間にか思考停止させられてしまう。試されているのは知識よりもその取捨選択だ。ニュースと真実の違い、…。加速する強欲資本主義の中、…。頼れるものは…本質に戻る想像力と他者への優しさだろう。」と述べています。
 まったくその通りですが 問題は「本質に戻る想像力」が如何にして可能になるかだと思います。もちろん私の見解は 資本主義のあり方を本質論的に明らかにしたマルクスの理論だということです。
 プロローグでは 9.11後のアメリカ、ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズを紹介し 「アメリカでは上位1%の人間が、国全体の富の8割を独占している。…想像を絶する資金力をつけた経済界が政治と癒着するコーポラティズムだ。9.11テロをきっかけに加速し始めたそれは、大幅な規制緩和とあらゆる分野の市場化を実施、この10年でアメリカの貧困層を3倍に拡大させた。」と明らかにして 「独裁的な政策決定を行う政府と、正確な情報を伝えないマスコミ」が問題であり 福島第一原発事故後、日本も同じ道をたどっていると警鐘を乱打しています。
 いま安倍がゴリ押ししている共謀罪は 9.11直後に作られたアメリカの愛国者法と同じく、テロ対策を口実に一般市民を監視し・取り締まる法律であり 独裁国家を作り出そうとするものです。TPPや原発、南スーダンへの自衛隊派兵での、さらには森友学園・加計学園問題での情報の隠ぺいと情報操作を 私たちはこの間連日目の当たりにしています。筆者の警告通りのことが いまの日本で進行している事態だと思います。

 第1章では プロローグで簡潔に述べられた「政府とマスコミは必ず嘘をつく」ことが原発とTPPでより詳しく紹介されています。全面的な紹介は省き 私がなるほどとあらためて納得した点のみを紹介します。
 原発事故(放射性物質の拡散)の隠ぺいは 日本だけではなく、アメリカでもイギリスでも世界中で繰り返し行われていて 事故が露見した場合は「ただちに健康に害がない」がどの国でも常套句になっていて 被害はできるだけ小さく発表していると明らかにしています。反原発の運動圏では いまやこれは常識になっています。

 第2章では 東欧、アフリカで起こった民主化革命は アメリカによる新しい侵略でもあったと暴露しています。「1980年代以降、米国は非協力的な外国の政権を不安定化し転覆させるために、従来のような軍事力ではなく『人道主義・民主主義』というソフトパッケージに包まれた手法を採用している。まず、ターゲットなった政府や指導者を、CNNやBBC率いる国際メディアが『人権や民主主義を侵害している』として繰り返し非難する。そして、水面下で米国が支援し、時には訓練された市民団体がツイッターやフェイスブックを通して人を集め、反政府運動を起こすのだ。彼らは暴力的な行動で政府を挑発し、国際メディアがそれを『独裁者に弾圧される市民』というわかりやすい図に当てはめてイメージを広げていく。無防備な市民を救うという理由で軍隊の武力介入が正当化され、最終的にターゲットになった政権は『民主化革命』という崇高な目的のために、内部から自然に崩壊したことにされる」と述べています。そしてグルジアのバラ革命、エジプト革命を成功させた市民グループなどに財政援助してきたのは 大物投資家のジョージ・ソロスだと明らかにしています。また 2011年のエジプト革命は アメリカのNED(アメリカ民主主義基金)が支援し 闘いを象徴するロゴマークにはミロセビッチ大統領を倒したセルビア(旧ユーゴスラビア)と同じ握りこぶしのロゴを使っていたそうです。
 リビアのカダフィがターゲットになったのは「リビアは144トンもの金を保有していた。カダフィはそのお金を原資に、ドルやユーロに対抗するアフリカとアラブの統一貨幣・ディナの発行を計画していて そこにはIMFや世界銀行の介入から自由になるアフリカ通貨基金とアフリカ中央銀行の設立も含まれていた」からだと明らかにしています。アメリカがイラクに軍事侵略したのは サダム・フセインが石油取引をドルからユーロに変えようとしたからだということは今では周知の事実になっていますが リビアも同じだったということです。また セルビアでは ミロセビッチ打倒後には「国の大規模な規制緩和と民営化により市場解放され、莫大な公共部門の産業や事業、そしてヨーロッパ最大規模の埋蔵量であった鉛、亜鉛、銀、石油といった天然資源が次々にアメリカの投資家と多国籍企業の手で落札された。」と明らかにしています。
 サダム・フセインが打倒されたとき CNNは大勢の市民がフセイン像の上で踊っている姿を放映していたが 後日ワシントンポスト紙がそれは「やらせだった」と明らかにしたそうです。銅像の周りにいるのは報道陣と米兵に囲まれた数十人だけで 広場の周囲は米軍戦車数台が包囲して他の市民から隔離していたということです。アラブの民衆よりの報道をしていたアルジャジーラを 筆者はCNNやBBCと同列に扱っているのでエッと思ったのですが 何とアルジャジーラの代表はかつてCIAの部下だったことがウィキーリスクに暴露され辞任しているそうです。筆者はそれ以外にもやらせだったニュース報道の事例を数多く紹介しています。
 テレビが信用できないからと、フェイスブックやツイッターの情報を信じる若者が増えていますが フェイスブックもツイッターも民間企業であり「政治から中立だと考える方が不自然だ」と 筆者は警告しています。

 第3章では 市場化を導入する手法が明らかにされています。最初のステップは敵を作ること。次のステップはスローガン。「国民の感情を揺さぶり、誇りを持たせ、高揚させ、そして内容はよくわからないワンフレーズをすみずみまで浸透させる」のです。そして これらの作業に マスコミが重要な役割を果たしていると述べています。

 増補版袋とじでは マイナンバーとTPPについて暴露しています。マイナンバーでは「外国はどこも導入、日本だけが遅れています」なる政府の説明は 真っ赤なウソで すべてを一元化した制度は、先進国ではまだどこにも導入されていないのです。さらに 社会保障番号制度を1936年以降導入しているアメリカでは、なりすまし被害やカードの不正売買が後を絶たず、深刻な社会問題になっており また韓国では 国民の7割以上の個人情報が流出しているそうです。だから導入している国々では 制度自体の見直しが検討されています。TPPでは ISDS条項と医療・薬価について暴露・真実を明らかにしています。この中で「フジテレビと日本テレビは外国人株式保有率が20%を超えている」と書かれていて 驚きました。

 第3章で グローバル資本の支配から脱出した例としてアルゼンチンを示しています。「80年代の終わり、IMF傘下にいたアルゼンチンは、国営企業、石油を含む天然資源、銀行、道路、動物園や公共トイレなどを、外国投資家に大安売りで売却した。その結果、01年12月の銀行閉鎖と共に約1万社が倒産し、経済が崩壊した。03年5月キルチネルが大統領に選出された。彼は対外債務をデフォルトし、IMFの下で民営化された企業と基礎年金を再国有化し、銀行に介入した。貧困撲滅のためのプログラムに予算を投じ、経済再生に向けて社会的支出を倍増し、製造向けの公共投資を拡大…。また 緊急公的就職プログラムを開始し、労働人口の約半数を占める失業者への支払いを確約した。さらに、軍の権限を弱め、軍事予算を削減し、基礎年金を倍増させ、税収を雇用拡大プログラムや教育、社会福祉、生産的投資を通した経済成長プログラムなどにあてた。その結果、03年末までにマイナスからプラス8%に成長したアルゼンチン経済は、11年までに90%の成長を遂げた。01年に50%だった貧困率は、11年の時点で15%以下へと減少した。」 そしてアルゼンチンの成功は、意識レベルでの変革であり 「国とは何か」「国民を幸福にする持続可能な成長とは何か」を追求したことであり 大統領の言葉「海外の債権者たちは、しきりに『負債を返済するためには、IMFと協定を結ばなければだめだ』と言ってくるが、アルゼンチンはこう答える。『わが国は主権国家だ。負債はお返ししたいが、金輪際、IMFと協定を結ぶつもりはない』」を紹介しています。
 架空の貸付貨幣資本(金融資本)が資本の軸に座った現代の強欲資本主義から「脱出」する道は もともと架空(観念)ゆえに人類の生存にとってまったく必要のない膨大な架空の貸付貨幣資本をなくし 経済を実体経済に戻すことです。先月号で述べたように 架空の貸付貨幣資本をなくす方法は 経済危機が爆発したとき公的資金を投入して救済するのではなく、倒産するがままにしておくことですが その実現を担保するのは 直接・参加型民主主義です。いくら架空の貸付貨幣資本が膨大だからといっても、住民の全員を買収することは不可能だし もしそれをやれば資本家の「儲け」はふっ飛んでしまいます。代議制(間接民主主義)では わずかな議員を買収すればすむということです。
 5月15日の朝日新聞で 高知県の大川村で村議会を廃止して、町村総会を設置する検討が行われていることが報道されました。大川村は 人口が約400人で、高齢化率は4割を超えており 議員のなり手不足が原因だということです。日本初の直接民主主義が成立するのではと期待させる話ですが 記事によると、何と1950年代に東京都の八丈島の村で町村総会を設置した例があるそうです。おそらく町村合併で廃止されたと推測されますが もしこれが続けられていたら、続く町村があったと推測され 直接民主主義の理念が少しは民衆に広がっていったと思われ 残念です。
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