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2017年下期景気動向分析


2017年下期景気動向分析
――――――――――――――                花 山 道 夫
 [注]紙面の都合で大幅に割愛しました。割愛した箇所は[………]で示しています。なお、ひとくち評論はお休みします。(松)
  はじめに
 8月3日、改造内閣を発足させた安倍晋三はこう力を込めた。「最優先すべき仕事は経済の再生です。安倍内閣は、これからも経済最優先であります。…4年間のアベノミクスにより、雇用は200万人近く増え、正社員の有効求人倍率も1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず1つ以上の正社員の仕事がある。政治の大きな責任を果たす。やっとここまで来ることができました」。そして「しかし、まだまだやるべきことがあります。雇用を増やし、賃金を上げる。この経済の好循環を更に加速することで、デフレ脱却を成し遂げる」と訴えた。
 安倍政権もいよいよ崩壊が近づいてきた感がありますが、まだとどめを刺すまでには至っておりません。
 7月23日に日銀の審議委員木内登英氏と佐藤健裕氏が退任した。2人とももともと過激な金融緩和論者とみられていたが、黒田東彦総裁が異次元緩和に乗り出してきてからは緩和の副作用を心配する論調に転じ、最後の会合まで今の政策に反対し続けた。
 7月25日には2人に代わって審議委員に就任した三菱東京UFJ銀行の元副頭取の鈴木人司氏と三菱UFJリサーチ&コンサルティング出身の片岡剛士氏の就任会見が行われたが、最後の質問「そもそもの話として、ご自身が審議委員に選ばれた理由についてどのように自己分析していらっしゃるか」に、鈴木氏は「どうして選ばれたかというのはよく分かりませんし、政府のご判断ということですが、…」、片岡委員は「…私自身は、20年程、色々な形で経済政策や経済情勢の調査をしてまいりましたので、そういった知見を活かしたいと考えています。…」と明確に答えなかったが、理由は明快、政府に都合がよいからである。特に片岡氏はリフレ派として有名である。これからは全会一致が少なくとも黒田氏の任期の来年4月までは続くだろう。

(Ⅰ) アベノミクスに足りないのは論理的思考
 安倍内閣の支持率が調査機関によっては一時30%を切ったところもあったが、現在(内閣改造後)は30%台の後半ぐらいを何とか維持している。支持率の低下の原因は加計学園問題、森友学園問題、稲田朋美元防衛相の国会答弁や一連の発言、「このハゲー」の豊田真由子等また安倍首相自身のはぐらかすような答弁によるものでしょうが、これだけの問題を起こしながらこれだけしか下がらないというのは、花山としては相当に意外である。要素分解をしてみると、何とか改憲を実現してもらいたいというコアの右派の手堅い層は別として、アベノミクスで景気が回復したと信じている層が相当数いる以外に説明できない。
 アベノミクスは2%の物価上昇、2%の実質GDPの成長、3%の名目GDPの成長を公約した。特に現状はデフレ状態だとして白川総裁に代えて黒田東彦によるバズーカと称する強力な金融緩和を通してデフレ状態を解消することを目指した。今の内閣に何を期待しますかというアンケートなどで必ず上位に来るのが「経済対策」なのですが、リーマンショックのような急激な落ち込みが起きた場合は財政をふかして落ち込んだ需要を回復するということはありうる。一時的な需要不足に対する対策としては有効である。放置しておくとさらに需要が減少するという意味においてである。また自然災害に対する復旧としての臨時の財政投入も当然である。この場合は有効かどうかというのは判断基準にはならない。つまり「経済対策」というのは短期的なものであり、長期的な視点で組み立てるのが「経済政策」なのである。「入るを量りて出ずるを制す」という格言がある。会社や家計で収入に見合って支出は計画的に行えということである。もちろん将来の収支の見込みを勘案して借り入れもあり。こういう考えは安倍には全くない。
 アベノミクスには「三本の矢」という看板政策がある。これには旧と新がありますが、例によってはぐらかしで旧の方針を変えたわけではなく、旧の方が明確なのでこれに沿って検討していく。
  第一の矢:大胆な金融政策
  第二の矢:機動的な財政政策
  第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略
 第一の矢と第二の矢は相互に依存する関係なので同時に展開していく。先ず、安倍の応援団への反論から始めよう。上念司『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)を俎上に上げる。Q&A方式で叙述しているのですが、まずこの著者の人となりがわかるQ3から始める。
  Q3:日本の借金は1000兆円以上だと危機を煽る財務官僚は経済のプロですか?
  A3:いいえ、ほとんど法学部出身です。先進国でも発展途上国でも普通、経済のテクノクラートは経済学博士号を持っています。
 その後「明らかに低学歴な財務官僚たち」として財務省キャリア官僚の出身大学並びに出身学部を図表にしている。また20年ぐらい遡って財務官僚トップの出身大学と学部について実名をあげて載せている。そして法学部に財政再建はできないと結論づけている。かなり無茶苦茶な論理であるが、アベノミクス信奉者の最大特徴である論理的思考の欠如が出ているので本物だと確認できた。そもそも大学で新古典派の理論で洗脳されるより、何のために経済学を学ぶのかの視点にたって自学自習するほうがよっぽどよい。で上念氏の経歴はどうだろうと思って奥付をみると、1969年東京都に生まれる。中央大学法学部法律学科卒業、日本長期信用銀行、臨海セミナーに勤務したあと独立。2007年、勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立し、取締役・共同事業パートナに就任。著書には『「日銀貴族」が国を滅ぼす』(光文社新書)、『異次元緩和の先にあるとてつもない日本』(徳間書店)、『経済で読み解く大東亜戦争』(ベストセラーズ)とある。法学部には経済がわからないという趣旨を述べて法学部卒業の著者が経済を語るとは驚きだ。もう番長クラスである。
   「日本政府はGDPの2倍の借金を抱えており、その金額は約1000兆円―これ  を国民一人当たりに直すと約830万円になる」
   このことは日本の国民ならもう誰でも知っている話です。朝日新聞をはじめとした  マスコミが今日も、「日本は破産するかもしれない」と国民の不安を駆り立てている  からです。
   しかし、同じ日本政府が700兆円近い資産を持っていることを知る人はあまりい  ません。この金額がどれだけ巨額なものであるか…それは人口は約3倍、経済規模も  約4倍のアメリカの政府資産が150兆ほどしかないことと比べれば一目瞭然です。  日本政府は世界で一番の金持ち政府であるといっても過言ではありません。(P3)(下  線:引用者)
  Q1:日本政府に資金があるといっても、それは道路や空港など固定資産がほとんど  で、すぐには換金できませんよね?
  A1:いいえ、7割がたは金融資産なので、すぐに換金できます。財務省が発表して  いる「日本国のバランスシート」を見れば明らかです。(P14)
 運用寄託金(会計上は預り金に相当するもの:上念もこれは除いている)を除外しても347兆円ほどある。有価証券の内訳で外国債(102兆円)というのがあるが、いわゆる外貨準備というものである。確かに、これは多少売ってもいいが3兆円以上運用益が出ている。貸付金の相手先としては地方公共団体(49兆円)、日本政策金融公庫(14兆円)、都市再生機構(10兆円)など1000億円を超える団体は30以上ある。額は少ないが国際通貨基金(IMF)もある。これ誰が買ってくれるの?
 出資金70兆円の中には1兆697億円の出資を受けている都市再生機構(UR)があるが、それについて上念は
   昔の公団住宅のイメージでこの団体を見てはいけません。現在URが手掛ける物件  は都心の一等地の高級マンションばかり。家賃も近隣相場に比べて高く、富裕層向け  のビジネスをやっているといっても過言ではありません。(P21)
 これについては確認しようがないが、売れるか売れないかを議論している時にあの組織はけしからんことをやっているから売ってしまえという論理が成り立つなら、警察署をさきに売った方がいい。民間の賃貸住宅なら入居者がはいったままオーナーチェンジということで売却が簡単である。その場合、物件名もオーナーの個人名、例えば花山ビルとかついていない場合は入居者との契約内容も含めて大概引き継ぐ。URの場合は老朽化で建て替えという物件でないと難しい。職員3、386人も引き受けてもらわないとならない。中国の企業にでも売るか!東大も売るか!
 アメリカの政府資産が150兆円なのに対し日本政府のそれは700兆円もあり、日本政府は世界一の金持ちだなんてほざいていますが、国立大学をすべて民営化できるのですか?昔は国立と私立の授業料はかなりの差があった。これを民営化すれば授業料はさらにあがり、ローンを組まないと進学できない人が増える。日本政策投資銀行、日本政策金融公庫などの政府系金融機関が必要なのかという議論があるのは承知しているが、花山はここでは議論しないが必要だと考えている。 [………]
 
(Ⅱ) 統合政府という幻想 [注] 統合政府とは日銀を政府の子会社にすること (松)
   日銀が国債を買い取るということは、イトーヨーカー堂の手形をセブン-イレブン  ・ジャパンが買い取るのと同じです。セブン&アイ・ホールディングス全体で見れば、  手形の残高はゼロということになります。(P17-18)
 こういうのを融通手形と言います。手形を発行する裏には商品の取引があるはずです。だから通常は仕入れ先に手形を切ればいいのに、手形を受け取ってもらえないもしくは銀行から融資を受けられない時に知人に手形を貸してほしいと頼むときに発行するので、融通手形と言います。相当危ないですね。それはさておき4年以上続く異次元な金融緩和の結果、日銀の2年以上の国債の保有額は6月末で390兆円(A)になります。国債の発行残高は945兆円(B)、借入金、政府短期証券も含めると政府の借金は1078兆円となる。債務残高は対GDP比で253%となり、G7の中では2位イタリアの133.4を引き離してダントツの1位ですが、上念式純債務残高(ただし、花山が最新公表資料を基にデータを更新)で計算するとB-A=555兆円、さらにさきほどの金融資産347兆円を引くと208兆円なので2016年のGDP537兆円で割ると、38.7でカナダは25.3なので下から2番目となり健全そのものである。ちなみに財務省法学部卒業の官僚が計算すると130.7で堂々の1位である。これからも日銀に買ってもらったら返済しなくていいのならデフレが続いた方いいのではないでしょうか。そんなうまい話があるのでしょうか? (注)国債の残高についてはどこまでを含めるかによって違う。花山の今回の計算では財投債はいれて、借入金、政府短期証券は除外している。
 日本は法治国家であるので国債の発行には法律の裏付けが要ります。
   財政法
  [第四条] 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
  (第二項) 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
  (第三項) 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
  [第五条] すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。(傍線:引用者)
 それがいけるかどうかは、財政法第五条の下線部「日本銀行からこれを借り入れてはならない」にある。 [………]
 国債は一般的には第何回債という。通常は3か月毎に更新される。9月からは348回債となる。2016年の3月から11月まで利回りがマイナスになっているが、表面利率0.1%の国債を100円で買えば実質利回りも0.1%ですが、101.25円で買えばマイナス0.024%になるわけです。だが買ってすぐ102円で日銀に転売すれば利益が出るわけです。買ってすぐというのがポイントです。利息収益ではなく売買差益なのです。
実質、財政法第五条で禁止されている日銀の国債直接引き受けと同じことです。
 右の図は[図省略]黒田総裁就任直前と現在を比較したものである。なお省略したものもあり合計は一致しないのでご了承ください。国債だけでなく株式、投資信託、不動産法人投資口いろいろ買っている。資産の部の網掛けの部分である。発行銀行券から政府預金までが負債で資本金(1億円)と準備金が純資本になる。引当金勘定というのは貸倒引当金などのように貸した金が回収できない時に備えるもの。輪転機を回してお札をするなどというが大してお札は増えていない。増えているのは民間銀行が預けた当座預金である。
   統合政府のバランスシートを想像してみよう。国債は両側に計上されて実質的に相  殺できるが、負債側に民間銀行からの当座預金と債務超過が残ってしまう。
   この民間銀行からの当座預金、つまり国民の預金は踏み倒せると言っているのに等  しい。国債をいくら日銀が買おうが、政府の債務超過額は1円も減りはしないのだ。  (日経新聞17/6/20 三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究理事 五十嵐啓喜)
 もう少し解説すると、先ほど実質、日銀の直接引き受けと同じといったが、銀行を通さずに直接日銀が引き受けると当座預金が増えずに銀行券が増えるのでおそらくインフレになるのが早いと考えられる。これの方が早めにブレーキがかけられるのでまだましかもしれない。危険なことには変わりはないが。白川方明氏が総裁に就任していた2013年3月までは「日銀券ルール」という暗黙の規則が存在していた。日銀券ルールとは、「保有する国債の量は、日銀券の発券残高を超えない」というものです。もうすでに3.5倍に達している。さらには、金融緩和を終了する場合には速やかに移行出来るように「残存期間3年未満の国債しか買い取らない」というルールも設けていた。これだと売るのではなく政府から返済されるだけなので金融市場に与える影響が少ない。 [………]

(Ⅲ) 問題が発生している以上解決の道は必ずある
 穿った見方をすれば最初から国債を日銀引受で際限なしに発行して景気浮揚を目途として物価の2%は本来の目標ではなかったとするとなかなかの策士であるが、実際のところはいくら金融緩和をしても物価が上昇しない。だとすると日銀が国債を引き受けたら返さないでいいと軌道修正をしたというのが本当のとこだと考える。ただし、2%の「物価安定目標」の看板は降ろすことはない。 [………]
 今回の金融緩和もだいぶ長い間続いたのですでに弊害が発生している。いわば問題がないところに問題を発生させたのでかなり難しいことになる。
 そもそも日本の現状がデフレだと規定したところに間違いの第一歩があった。次にではデフレがなぜ悪いのかという突っ込んだ議論がなされていなかった。分析なしに金融緩和すれば投資が拡大して(途中から期待に変わる)インフレになる。
 A国はインフレ率がこの10年間の実勢が平均2.5%、今後も2.5%程度が予想されている。B国はインフレ率がゼロ%だとする。C社は自己資本2000万円、借入金3000万円で設備投資をしようと考えている。A国の銀行は10年固定で利率3%、B国では利率1%とする。C社はA,Bどちらの国で投資するでしょうか? 岩田規久男副総裁は間違いなくこういう。A国に決まっている、A国はインフレ率が2.5%で実質金利は0.5%なのでこっちの方が断然得だ。
 正解はどちらとも言えない。投資してどちらの方が儲かるかが重要なので、どちらにも投資しないということもありうる。そもそも業種にもよりますが、実質利回りが少なくとも5%ぐらいないと投資案件にならないので金利の0.5%の差は重要ではない。
 各国ごとにある特殊な要因があるのではないかとまず考えなければならない。日本の場合これを左右する要因をいくつか挙げてみよう。
 (1) 人口が減少傾向にあり、高齢化がすすんでいる。
 (2) 製造業が強い、基本的に製造コストの問題はあるが工業製品については国内で一貫生産が可能である。
 (3) 食糧は一定程度自給ができる。特に主食であるコメは全量自給できる。
 (4) 資源はかなりの量を輸入に頼らざるを得ない。
 順次分析していくと (1)は需要面でマイナス、(2)(3)供給面でプラス、特に製造業は不断にコストダウンしているので物価の下押し圧力が強い。(4)資源の豊富な国は輸出に頼ることが多いので資源価格が下がるとインフレになりやすい。例えばベネズエラ。日本の場合は原油が下がっても問題はない。将来的には電気自動車が普及しそうなので原油価格は下がる傾向になる。ただし、発電量は増やす必要があるのでそれをどうするかということが問題になる。廃棄物処理のコストを無視したりして本当は高コストの原子力発電を止めればこの問題は一気に解決する。原子力発電だけに下駄をはかせて競争を阻害している。 [………]
 (4)資源の問題についてもインフレ圧力は少なくなる可能性があるのではないかと考えられます。
 そこで 当然(2)(3)(4)は変えられないが(1)は変えられるのではないかという疑問が出てくる。今すぐ子供を増やす政策をやっても大きくなるまで扶養しなければならない。老人と子供両方はきついので移民労働者を入れたらどうかと提案が出ている。これは労働者の不足を補うという観点からは〇であるが、非熟練労働者と移民労働者が競争させられてさらにデフレ傾向を作り出すので絶対やってはいけない政策である。 [………]
 派遣社員ではかなりハードルが高い。政府が労働者の賃金をあげろとか言うのがスジ違い。正社員で働きたい人は全員働けるように法改正、制度設計をすることが重要なのである。例えばどのようにするか、そんなものは法学部出身の官僚に聞け。安倍政権になって株が上がった。労働者の搾取がきつくなって企業が儲けたからか、日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が買い支えたからか、どっちかはっきりしろ。
 最後に〔第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略〕岩盤規制をドリルでこじ開けたらどえらいものが出てきましたね。加計学園とは驚きました。続きは来春。
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