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『未来』245号の香月泰氏の論文について

『未来』245号の香月泰氏の論文について
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 革共同再建協の『未来』245号(18/5/03)に 香月泰氏の論文「焦点 アメリカ覇権は終焉に向かうか」が掲載されています。
 一読して判るように この論文には「帝国主義」という言葉が一切使われていません。アメリカは戦後一貫して、そして今も帝国主義であり 基軸帝国主義です。論文では帝国主義という言葉を覇権国という言葉に置き換えているようですが それは単に言葉の使い方ではなく おそらくアメリカを帝国主義と規定したくないからだと思います。
 覇権という言葉は1980年頃から使われるようになったと思いますが 帝国主義はマルクス主義の用語(資本主義の独占段階と規定)として広がりましたが 覇権は一般的用 語です。つまり 帝国主義には資本主義の階級関係が押さえられていますが 覇権はヘゲモニー・トップを争うという意味で、階級関係は含まれていません。スポーツなどでも使われています。だから左翼が 帝国主義を覇権国と置き換えることは 階級的視点を否定することであり 間違いであり、有り得ない話なのです。
 では 何故筆者が置き換えたのかです。それは 階級的規定をしたくないということだと思います。帝国主義と階級的規定をすれば レーニンの有名な帝国主義戦争での「祖国敗北主義」「戦争を内乱へ」のスローガンに示されるように 資本主義・帝国主義の打倒・革命を自らの課題にしなければならないからです。帝国主義が帝国主義でなくなるには帝国主義間戦争で敗北するか民衆の革命で打倒されるかのどちらかしかありません。しかも 第一次大戦・第二次大戦で2度も敗北しながらドイツは、そして第二次大戦で敗北した日本も 戦後再び帝国主義として復活しました。そういう意味で 革命以外帝国主義をなくすことはできないのです。だから 帝国主義を覇権国と置き換えることは資本主義・帝国主義の打倒・革命をしたくないと言っているのと等しいのです。
 私は 帝国主義を覇権国と言い替えることは かつてのカウツキー「超帝国主義論」の現在版だと思います。革共同(中核派)は 第二インター(社会民主主義・カウツキー)やスターリン主義を批判して「反帝反スタプロレタリア世界革命」を党是としています。まさか 党内から現在版「超帝国主義論」を唱える人が出てくるとは 驚きました。

 具体的に見ていきます。
 最初に「あたかもアメリカは覇権国としての地位を自ら放棄し始めたかのようである」とあり 最後にまとめ的に「トランプ政権は、…これまでアメリカを覇権国たらしめてきたものとは正反対の政策を押し進めている。もはや覇権国としての地位は、『アメリカの発展を阻害する重圧』になっているのだ。」と述べています。
 「自ら」とあるように これは明らかにアメリカ帝国主義の「自動崩壊論」そのものです。先にも述べたように 帝国主義は帝国主義間戦争で敗北するか民衆の革命で打倒されるかのどちらかでしか崩壊しません。自動崩壊など有り得ない話です。なぜなら 帝国主義は 資本間の自由競争の上に成立した独占(段階)です。独占資本は 資本間の自由競争としての平均利潤を形成するだけでなく その上に市場の制圧や生産性の高度化などによって、独占的(寡占的)な超過利潤を得ています。そのような超過利潤を含めて 資本は利潤獲得競争をしています。そして 利潤が得られなくなれば その資本は当然破滅・倒産です。だから 資本・帝国主義は 有利な利潤獲得条件を自ら放棄することなど有り得ないのです。実際20世紀の初頭にレーニンが帝国主義と規定したのは 英・米・仏・独・伊・露・日の7ヶ国で その後ロシアだけが革命で打倒されて帝国主義(資本主義)ではなくなりましたが 他の6ヶ国はいまも帝国主義国です。ただ 基軸帝国主義は 第2次大戦を挟んで 戦前はイギリス、戦後はアメリカと代わっています。基軸国たらしめているのは 経済力と軍事力です。戦前はイギリスが、戦後はアメリカが この点で他の帝国主義を圧倒しているということです。
 「もはや覇権国としての地位は、『アメリカの発展を阻害する重圧』になっている」なる見解は アメリカ帝国主義の「美化」そのものです。しかも トランプを「美化」しているのです。おそらく トランプがTPPなどの多国間交渉から2国間交渉に転換したことを指していると思いますが それは2国間交渉の方がアメリカの利害を相手国に押し付けやすいからです。自らの「覇権」を使って交渉をより有利に進めようとしているだけであって 「覇権」を止めようとしているのではないのです。しかも トランプは 政治家の前に不動産屋という商売人です。自らの損得を忘れることなどありえません。
 「覇権の重圧」とは何を指すのかです。おそらく 覇権のために世界的展開をしなければならない軍事のための費用が莫大になり、国家財政を圧迫している(財政の崖と言われている)ことを指しているのだと思われますが その莫大な軍事費に群がって米帝の基軸的資本・軍需産業は生きているのです。この間 米朝会談へ向かおうとする流れに対し 「リビア方式」を主張したり、米韓の通常戦の軍事演習に核兵器搭載可能な爆撃機やステルス戦闘機を出して米朝会談を潰そうとする動きがあることを見れば 明らかです。トランプもそれが判っているがために 朝鮮の代わりにイランとの核合意から離脱して「イラン・中東を戦場にする」と宣言しているのです。莫大な軍事費がいくら重圧になろうとも米帝は 米帝資本・軍事産業が生き延びるために その軍事費を大幅に減らすことなど不可能なのです。

 1段目に「戦後世界におけるアメリカの覇権(ヘゲモニー)とは何であったのか。それは次の3つを条件としている。」として 第1に政治的条件・イデオロギー 「第2は経済的条件、ドルを基軸通貨とする自由貿易体制」「第3には軍事的条件だ。」と述べています。第2と第3はその通りですが 第1は違います。
 アメリカはダブルスタンダードの国であり アメリカの主張は 経済的あるいは軍事的に他国を侵略するための方便・口実に過ぎません。筆者は そのイデオロギーとして「『自由と民主主義』『法の支配』『普遍的人権』を『共通の価値観』として掲げ」と述べていますが これほどの美化はありません。アメリカ万歳と言っているようなものです。それとも筆者自身も ダブルスタンダードで良いと考えているのでしょうか。
 白人警官が 何もしていない黒人を犯罪者と見なして 黒人が丸腰なのに一方的に銃殺する国です。どこに法の支配があると言えるのか。この黒人に人権はあったのか。逮捕して裁判にかけるより銃殺した方が早いと 警官つまり権力の末端が考え実行している国なのです。共通の価値観などとどうして言えるのかです。また イラク・フセインを標的とした湾岸戦争は ありもしなかった「大量破壊兵器」を口実にして開始されたのです。金正恩は「リビア方式」に反対しています。当然です。リビアのカダフィは暗殺されると思ったから核開発を放棄しました。だが 8年後にアメリカは 「内乱」の形をとって、ここまで屈服したカダフィを打倒したのです。それは 北アフリカをアメリカ資本のための市場にするためだったのです。
 何故 筆者が覇権の条件の第1に侵略のための単なる口実やウソ・ペテンの類の政治的条件・イデオロギーをあげるのかです。それは 本当の条件は軍事と経済だということを否定したいからだと思います。軍事と経済だとすると実体的基礎・土台が問題となり 打倒・革命以外ないからです。筆者は 資本主義のイデオロギーは虚偽のイデオロギーだということを 理解していないのだろうか。

 3段目に「タイのバーツ暴落を契機に…アジア通貨危機は、金融グローバリズムによって可能となった大量かつ急激な資本移動がもたらす破壊作用がいかにすさまじいものであるかを垣間見せた。」とありますが 前半と後半がなぜ関連するのか 特に後半の具体的データを明らかにしない限り 自分の勝手な思い込みであって、論証になっていないと思います。
 当時バーツはドルペッグ制(ドルとの固定相場)を採っていました。ドルが他の通貨に比べて高くなり、当然バーツも高くなって タイの実体経済との乖離が生じました。そこに金儲けのチャンスがあるとみたヘッジファンドがバーツの空売りをあびせ タイの中央銀行は買い支えができなくなり バーツは一気に半分以下に値下がりしました。周りの国々にも波及し タイを軸に東南アジアの経済は不況のドン底に突き落とされました。その結果 東南アジアに投資していた海外の資本は引き上げました。資本移動があったから不況に突き落とされたのではなく、不況になったから資本移動が起こったのです。順序・因果関係がまったく逆です。
 アジア通貨危機で明らかにすべきことは ヘッジファンド、つまり投機的貸付貨幣資本(金融資本)の悪らつさです。「大量かつ急激な資本移動がもたらす破壊作用」ではありません。資本の引き上げは 不況に突入したから生じたのです。筆者には 投機と投資の区別がないのかなと思います。
 当時私は 株などの金融商品は値上がりするから儲けが生じると思っていました。ところがヘッジファンドは (バーツの)値下がりで儲けを出そうとしたのです。後から考えたら 変動が生じれば価格差が生じるので貸付貨幣資本にとっては空売りで儲けることが可能になるのだと解りました。当時、『資本論』のⅡ巻・Ⅲ巻を再学習をしていたので 貸付貨幣資本をマルクスの理論で再学習しなければダメだと思いました。筆者は 『資本論』Ⅱ巻・Ⅲ巻をまじめに読んだことのない「学者」たちの説を 受け売りしているのかなと思います。
 リーマンショックのとき 日本の金融機関はアメリカの担保証券をそれ程買っていないから影響は少ないと言われていましたが 米欧が危機に陥り輸入を控えたので 次の年、日本は輸出が振るわず、金融ではなく実体経済の収縮が起こりました。「リーマンショックは、新自由主義グローバリゼーションの限界を明らかにした。」と書かれていますが 「限界」とは具体的に何を指すのかです。その指摘がなければ 論証ではなく、個人の思い込みにすぎません。
 貸付貨幣資本は より多くのカネを集め 他者にその集めたカネを貸し付け、利子を取ることで成立している資本です。現在 世界的に過剰生産状態が続いていて 各国政府は国債発行で得たおカネを投入して、過剰生産の危機が金融危機から恐慌に発展するのをなんとか防いでいます(その論理は『資本論』Ⅱ巻21章に書かれています)。いま 金融資本の大半は国債発行で創られたおカネ(架空)であり、カネあまり状態が続き 他方貸り手がいないため金利は1%を切っている有様です。にもかかわらず 各国政府は金融緩和を続ける以外に方策はないのです。集めたおカネは経済実体の裏付けがなく(架空そのもの)かつ貸付け先もないのです。これが貸付貨幣資本の生存を揺るがす制限です。
 「新自由主義グローバリゼーションの…」と言っても 何ら具体的なイメージを筆者は語っていません。資本・帝国主義間の競争・争闘戦を忘れ、グローバリゼーションで世界が1つに向かっていると見なすことは「超帝国主義論」そのものです。
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