FC2ブログ

記事一覧

浅井隆『この国は95%の確率で破綻する!!』を読んで

浅井隆『この国は95%の確率で破綻する!!』を読んで
――――――――――――――――――――――
 11月14日の新聞に 7~9月(第3四半期)のGDP第1次速報値が実質で前期比0.3%減(年率1.2%減)とでていました。7~9月は 集中豪雨・台風・地震と天災が続き 相当な被害がでただけでなく 土砂崩れによる鉄道・道路の寸断や関空の水没と連絡橋の破損、北海道の停電等で物流がストップし、生産も相当落ち込んだと見ていたので アレッ意外に少ないなと思いました。12月10日の新聞に 第2次速報値がでて、前期比0.6%減(年率2.5%減)と大幅に下方修正されたとでていました。下方修正したのは 12月3日に法人企業統計がでて、企業の設備投資が減ったのが原因とされていました。
 これらの記事と関連して 2つの記事が気になりました。1つは 11月20日の記事で 経済協力開発機構OECDが発表した19年の世界経済見通しで 実質経済成長率を3.5%と9月時点から下方修正した。日本の見通しも1.0%に引き下げた。その理由として「輸出が停滞していることにふれ、保護主義の動きがリスクだと指摘している」と。もう1つが 11月14日の記事で 日銀の総資産がGDPを越えたというもので 「総資産は553兆円で、名目GDPは552兆円」「総資産のうち国債が469兆円、投資信託が22兆円で 黒田日銀が異次元緩和を始める直前の12年度末の総資産は164兆円で、この5年余りで約3.4倍まで膨れ上がった。」というものです。
 いま経済情勢(資本全体の動向)を見る視点は この2つだと思います。前者は 米中の関税・貿易戦争が引き起こされ 世界経済は純経済的競争から保護主義の台頭・つまり国家権力を使った経済的争闘戦(メディアは米中の覇権争いと述べていますが、昔風に言えば世界経済の分裂化・ブロック化)の段階に突入しつつあるということであり 後者は国内経済、アベノミクスでの国債投入による危機(過剰生産・過剰資本の)の先送りがいよいよ最終局面に近づきつつあるということだと思います。
 12月13日テレビが 17年9月時点で、12年12月を起点とする景気回復の長さが 1960年代後半のいざなぎ景気を越えたと報道していたので 思わず吹き出してしまいました。誰一人 ここ数年景気が良くなっていると実感している人はいないと思います。さらに 右の表[省略]はそれを報じた14日の日経新聞に載ったものですが 誰が見ても14年から16年の景気は後退(停滞)しています。この後退局面まで景気回復期に数えているのですから 安倍政権のウソはとどまるところがしれないと言えます。
 つけ加えれば 第1次速報値修正のもとになった法人企業統計では 「7~9月期の企業の経常利益は18兆円(前年同期比2.2%増)で、同期では過去最高」また「大企業 の内部留保は443兆円で、前年同期から30兆円大幅増加した」ということです。災害でGDP・生産が大幅に減少しているのに企業は過去最大の利益を出していたのです。 「火事場泥棒」「焼け太り」以外のなにものでもありません。しかも企業は 利益の大部分を内部留保していて、その額は年間GDPの8割にも達する実に膨大なものです。いかに資本家が 労働者の賃金を低下させていってるか明々白々です。

 以上のような問題意識で 本屋で浅井隆『この国は95%の確率で破綻する!!』が目に入ったので 買って読みました。個人の資産家を対象に、どうすれば儲るかあるいは損をしないかを展開している浅井隆氏を引用するのは この本を推薦するためではありません。資産などに無縁な私たちが読んでも 彼のノウ・ハウから得るものはありません。そうではなく 彼らが日本経済の先行きにいかに危機感を抱いているかを、つまり日本経済はどん詰まりの危機に直面しているかを 知ってもらいたいからです。命以外(昔は鉄鎖以外でしたが)失うべきものを持っていない私たちは 個人の生活や収入・賃金は別として 経済全体の危機には それが爆発するまで無関心になりがちです。
 本書は 第1章:この国の財政の本当の状況 第2章:2025年、ついに徳政令発動! 第3章:2020年、日本国債暴落 第4章:国家破産の全貌―国家破産で起きる6つの出来事 第5章:日本の借金と徳政令の話 第6章:究極のサバイバル です。
 筋は目次で解ると思います。第6章が筆者の結論で 国家破産が起こったときに生き延びるために(サバイバル)2つのことを提案しています。1つは 全ての資産を円建てで持つのではなく、外貨で運用すべき そして投資したいのなら外国のファンドに投資すべきと 2つは 国家破産で治安が悪化するから、身を守るためにはニュージランドに移住しよう というものです。面積で日本の7割・人口は400万人強のニュージランドに 一体何人が移住できるというのだろうか。10人や100人ならともかく、10万人もが移住したらすぐに食料不足・食料危機が引き起こされます。私たちが考えるべきことは 日本に住んでいるすべての人がどうしたら生きていけるかであって それは「協同で働き全員で分配する」社会に変えることだと思います。国家破産で資産家の資産はゼロ化するのですから 彼らも働かないと生きていけなくなるということです。つまり 危機が爆発すればそうなるしかないということです。現在の新自由主義的「カネさえあれば」から生産・労働を軸とした人類の本来的あり方に舞い戻るということです。
 第5章では 鎌倉時代から行われてきた徳政令が紹介されています。学校で歴史を選択しなかった私にとっては ヘーそうだったんだと教えられました。

 第1章で筆者は 現在政府の借金・国債発行残高は1240兆円(国と自治体の合計)。「政府の借金はGDP比で60%以内であれば安全、90%は危険水準、200%は頭がオカシイほどのレベル」と言われていると述べ 第2次世界大戦末期の1944年で204%、破産し預金封鎖をせざるを得なかったギリシャは176 %、2008年年率1兆%のハイパーインフレに突入したジンバブエは208%であったと述べ 主要国の債務残高のグラフ(P5の表[省略])を示して 日本の国債残高は 現在は第2次大戦直後の英国に次いで2番目であり あと1、2年でそれをも突破して、歴史上なかった数値に突入することを明らかにして 危険レベルを越え破産・倒産の寸前にあると指摘しています。
 そして敗戦直後に起こった事態をスケッチしています。「太平洋戦争に敗れ、その時の借金でどうしようもなくなった日本国政府は、敗戦翌年の昭和21年の冬に突如、預金封鎖を断行、それと合わせて新円切換も行い、最高税率90%という財産税をかけてきた。ハイパーインフレが日本全土を吹き荒れていたために、2年半後の預金封鎖解除時にはその預金は、文字通り紙キレと化していた。」と。数年先にそうなると暗示しています。
 第2章では キプロス、ギリシャで国家破綻時にどうなったかをスケッチし アジア通貨危機の時マレーシアのマハティール首相が IMFの勧告に反対して外国人投資家に厳しい資本規制をして、その後マレーシアの経済を復活させた と賞賛しています。
 第3章では ある相場師の「東京オリンピック後、2020年秋以降日本国債が暴落する」を紹介し(著者は2025年と述べていますが) 国債の価格が下がるとその分金利が上昇するので 「国が破産する前に、銀行の連鎖倒産・消滅の可能性が高い。」と述べています。そして 日銀は金融緩和政策からの出口を見い出せなくなっているので 国債価格が下がると 債務超過に陥り「通貨円の価値が著しく毀損し、悪性インフレを引き起こすだろう」と述べています。
 この間アメリカは 年に2、3回金利を少しずつ上げて行っていますが(トランプは反対していますが )それは次の危機に対応できる様にする(金利を下げて金融緩和する)ためです。欧州も来年には金融緩和政策をやめると言い出し始めました。現在日本の金利は0.1%です。当然これ以上は下げられません。だから 次の危機の時の新たな対応策を日本は持てないのです。他方 だからと言って日銀が少しでも金利を上げたら 先に述べた様に国債価格の低下→悪性インフレが生じてしまうのです。しかも 日本の国債買取り民間会社は現在21社です。そのうち半数以上が外資系会社だそうです。外資系会社は儲らないと判ると一目散に撤退(売り逃げ)します。17年5月黒田日銀総裁は「1%金利が上昇した場合を試算すると、23兆円の評価損が発生する。」と述べたそうです。
 つまり 東京オリンピックというカンフル剤(新たな財政を投入する口実)が終了した時点か、安倍が政権から引きずり降ろされたとき(架空の)過剰資本の危機が悪性インフレとして爆発するだろうということです。
 第4章で 以上のような国家破産時に何が起こりうるかを6点上げています。ハイパーインフレ、大増税、徳政令、すさまじい大不況、治安の悪化、国そのもののパラダイム大転換。なお預金封鎖も徳政令の一種と言えます。国家破産の実例としてロシア、トルコ、ギリシャ、ジンバブエ、北朝鮮、アルゼンチン、ベネズエラらを簡潔にスケッチしています。そして結論として「国が破産した場合、苦しむのは政府ではなく国民なのである」とまとめています。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント