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『シニア左翼とは何か』を読んで

『シニア左翼とは何か』を読んで
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 この「ひとくち評論」をそのまま掲載しているブログ「資本主義の終わり論」に 6月「なななし」さんがコメントを2回寄せられました。1回目は10年10月号の「『フランスの内乱』とコミューンの原則」に「中核派に記憶を蘇らせられたのは癪ですが、いいブログだね。」で 2回目は15年4月号の「生産様式と宗教について」に「江戸末期までアジア的生産様式 イスラム圏の箇所 その他 すごく勉強してて頭が下がるんですがこんな内容では革マルに嗤[ワラ]われる 頑張りましょう」というものでした。
 久しぶりのコメントなので初めはオオッと思ったのですが 「革マルに嗤われる」とあるのでカクマル系の人かなと思われ 複雑でした。1990年頃までは 党の基本路線もあって対権力に対するゲリラ戦とともにカクマルは主要関心事でしたが 黒田寛一の『実践と理論』を読み あまりの日本主義にファシストしても終わりだなと思い(日本の右翼・ファシストは天皇にとって代わるという視点が全くないので、最後は天皇制ボナパルティズムの応援団に成り下がってしまいます) それ以降、カクマルは私の関心の外でした(当時の私の関心事は 正しいマルクス主義を見つけだし 党中央の誤りの根拠を明らかにすることでした)。しかもそれから20年もたっているので コメントにカクマルがでてくるとは予想外でした。10年10月号の「『フランスの内乱』とコミューンの原則」は これまで「コミューンの4原則」と言っていた誤りを明らかにしたものです。
 なお念のために ブログ「資本主義の終わり論」は15年11月までで 15年12月からは「資本主義の終わり論2」です。これは 前のブログは友人に有料で作ってもらったもので はじめ10年も続けばオンの字と言っていたのと その後無料のブログが当たり前になったので 切れるべくして賞味期限切れになったということです。

 先日「わいわい通信」の読者の友人から「サミットで安倍がリーマンショックの直前と言ったことが問題になっていますがどう思いますか」と聞かれました。「直前ではなく、第二のリーマンショックの第1段階です。つまり大恐慌はすでに始まっているのです」と答えました。
 恐慌は 過剰生産に陥り商品が売れ残りだし、手形で仕入れた原材料費の支払いができなくなり 貸付貨幣(資本)への需要が高まり利子率の高騰をまねき 引き起こされるもので マルクスも述べているように、一般的には恐慌・破局は金融恐慌から始まります。2008年のリーマンショックも サブプライムローンで家を買った低所得者が初期の優遇期間が終わり本来の高利が払えなくなり その債権を組み込んだ金融商品が価値を失いそれを買っていた欧米の銀行や保険会社が連鎖倒産したものです。当時日本はその金融商品をほとんど買っていないから影響は少ないと言われていましたが 実際には翌年外国への輸出がストップし 甚大な影響を受けたのです。つまり現象論的・景気動向としては 金融恐慌→実体経済破局の順に起こるのですが 今回は順序が逆になっていて 実体経済→金融の順になっています。実体経済の破局は 世界の工場とまで言われだした中国経済の低迷(超過剰な生産能力・6~7割ほどしか稼働していないと言われています)とエネルギーの大本である原油価格の暴落が示しています。先進国や中国は 必死になって超金融緩和、つまりお金をドンドン投入して 金融危機が爆発するのを封じ込めようとしています。だから順序が逆になったのですが いま欧米の資本だけでなく、中国自身の資本も中国から流出していると言われていますし また三菱東京UFJ銀行が 国債引き受けをやめることを決定したと報じられました。日本最大の銀行が国債を引き受けなくなれば 当初は日銀が買い取るので何ら問題がないように見えますが 長期になると、あるいは他の銀行が追随すれば 国債価格は低落し・金利は急上昇します。何が金融恐慌のきっかけになるのかは分かりませんが 恐慌・破局の第2段階(金融危機)に突入しようとしているのです。100年に1度と言われた大恐慌は すでに再び始まっているのです。

 『シニア左翼とは何か』(小林哲夫 朝日新書 780円 16.3発行)は 新聞に広告が出た日に塩川君がインタビューに応えていることが話題になり 買いに行きました。
 本書の構成は 筆者自身がはじめにで書いているので それを抜粋すると
   第1章では「2015年8月30日」の国会前集会などから、シニア
  左翼を「一貫組」、「復活組」、「ご意見番組」、「初参加組」の4つに分け
  てその特徴をまとめた。
   第2章ではシニア左翼が、…SEALDsにどのような思いを寄せ
  ているかを取材した。
   第3章は、学者や作家が積極的に発言を続けた姿を追った。
   第4章では、シニア左翼を年齢層に絞って細かく分類し、思想や行
  動形態ごとに括ることによって、彼らの生きざまや葛藤などを探った。
   第5章では中核派や解放派など新左翼党派の60代、70代の幹部
  をたずね、究極のシニア左翼ぶりを語ってもらった。
   そして、第6章ではシニア左翼の将来を予測しながら、彼らが日本
  の社会に与える影響について考えてみた。
 以上の構成からも判るように 本書は インタビューのルポルタージュが占め(特に第1章~第3章) 内容的には「そうだったの」以上のコメントはありません。ただ実に多くの方にインタビューしているのには驚きました。
 筆者の前作『高校紛争1969-70』の時 友人にインタビューの打診があって、友人はOKしたのに訪問はなかったと聞いていたので また数的にはともかく内容的には「高校紛争」としては60年の京都(労闘同)、69年の大阪(反戦高協)を外すわけにはいかないと思うので おそらく取材ルートは経産省前テント広場の紹介と思われ かたよりがあり、もう一つだなという感想を持っていたのですが おそらく今回は 紹介者を介するのではなく、自ら直接コンタクトをとられたのだと思われます。
 第4章で筆者は 「シニア左翼」を年代別に6つに分け その特徴を記しています。
 ①戦後派=1920年代生まれ ②1950年代=1930年代前半生まれ ③60年安保=1930年代後半生まれ ④ポスト60年安保=1940年代前半生まれ ⑤69年全共闘=1940年代後半生まれ ⑥ポスト全共闘=1950年代前半生まれ です。
   戦後派世代は 戦争中に多感な時期を過ごし、親しい友人や親戚を戦場
  でなくしているため、戦争への反発が大きい。
   1950年代世代は 10歳前後には軍国主義教育を受けていたが、突
  然民主主義教育に変わる。… この時代左翼と言えば共産党しかなかった。
   60年安保世代は 幼少時の空襲や疎開の体験が忘れられない。… こ
  の世代の学生運動家はアカデミズムへ進んだエリートが多い。… しかし、
  この人たちはシニア左翼にはならなかった。
   ポスト60年安保世代は 60年安保またはその直後に大学入学。… 
  60年代に再編された新左翼党派の指導者、学生運動の牽引者となった世
  代である。
   69年全共闘世代は 67年の羽田闘争、東大や日大の大学闘争などで中
  心となった。団塊世代と呼ばれ、学生運動といえばこの世代、というように
  象徴的に語られる世代である。… 69年全共闘世代が、ほかの世代の中で
  もっとも「三つ子の魂百まで」を体現しているように見える。もっとも暴力
  性を発揮した世代でもあったからだろうか、SEALDsに対して、なまぬ
  るさを指摘するのもこの世代に多い。
   ポスト全共闘世代は 高校生の頃に政治活動経験がある世代である。19
  70年代に入って全共闘の時代が終わり、連合赤軍事件や内ゲバを目の当た
  りにする。 
 この後 戦争体験による平和思想、民主主義、暴力、共産党アレルギー、同志意識と結束力、非共産主義・脱共産主義と 思想や行動をテーマに世代間の違いを述べています。
 私は『通信』15年3月号の「『展望』15号・落合論文を読んで」で60年世代(安保世代)と70年世代(全共闘世代)の意識・感性の違いを述べましたが 当時から運動の渦中で世代間の違いを感じていたので この世代区分は正しいと思います。
 ただ筆者は その違いを政治・社会面・あるいは闘争から述べていますが それだけでは 人々が決起した土台的(根本の)根拠は見つけだせないと思います。日本および世界の資本主義の基本的動向から明らかにすることが必要だと思います。いつの時代も民衆は自らの意思で決起しています。何故マス的にその意識・感性が創り出されたのかということが問題なのです。闘争は そうしたベースがあるところに 決起のきっかけを与えたにすぎません。
 第4章の最後に「かつて共産主義を理想郷としていたが、今はそれに幻滅して非自民党のリベラルな政権を目指すというシニア世代も少なくない。野党は共闘して政権交代を訴えるが、資本主義体制は守っていくという立場だ。69年全共闘世代に見られる」と書かれています。確かにそういう立場の人は増えていると思いますが 全共闘世代にはそのような人をあまり見受けないので 違うと思います。しかも 先に抜粋した全共闘世代の描写とは逆の見解になっています(ポスト全共闘世代の誤記か?)。15年3月号に書きましたが 全共闘世代と他の世代との違いは「革命はまだ先と見ていたか、いまが革命の時期と見ていたかとの差」です。だから「70年闘争の終結後も多くの人[全共闘世代]は(60年安保世代と異なり)再度ブルジョア社会へ舞い戻ることをよしとしなかった」のです。全共闘世代は 体制に対する根本的批判を内に秘めていたと思います。もし誤記でなければ 共産主義を「理想郷」ととらえてのインタビューなので 答えた人たちは適当に話を合わせていたのかなと思いました。共産主義とは 理想郷ではなく、資本を否定し自らが社会と生産の主人公になる民衆自身の現実の運動です。
 第5章に 各党派のインタビューを載せています。「革マル派、解放派現代社からは話が聞けなかった」とあったので 彼らはやはりカルトそのものだと再確認しました。
 その上で 塩川君のインタビューは いまいちワサビが利いていないように思いました。当人も「話したうちの半分も載っていない」と言っていたので ま、そうだろうなと思います。発言すべてをそのまま載せていたのでは、党派の宣伝誌になってしまうので 仕方がないとは思いますが 「革命をどう考えているのか」に対する答え以外に、党派間のバランスシートはないと思います。
 新左翼の「入門書」としてはこんなものだろうなと思います。シニア左翼にとって自分の過去を思い出すのにはよい手引きになりますが あえて薦めはしません。
 最後に 昨年から今年にかけてSEALDsの呼びかけで実に多くの若者が決起しました。SEALDsは 非共産主義、というより共産主義や革命には反対しているので そのまま未来の革命運動を担うとは思われませんが しかし 今回決起した人たちの中から 真のマルクスの理論を理解し(いまマルクスの理論と言われているものは、第二インターとスターリン主義によって根幹で歪曲されたニセものです)、未来の革命運動を担う人が必ずでてくると思います。
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